大卒新卒求人倍率は、前年と変わらず 2014年の新卒を対象にした大卒求人倍率は1.28倍と、前年(1.27倍)とほぼ同じの様相となりました(数値はリクルートワークス研究所メディア発表に基づく)。 「景況感」と「求人倍率の実態」の開き 下がらないことも景気の効果と言えば効果なのですが、最も注視すべき求職側の問題は、昨今話題のアベノミクスと称される景況感がこの求人倍率の伸びに影響しなかったことです。そしてまた、各種プレス(例 日本経済新聞)によれば、大企業の求人が増えていない一方、大企業への就職希望者が増えているとのことで、学生の景況感(大企業の求人増)への期待と大企業の求人の実態との間にズレが生じてしまっています。 数字は景気回復感、感覚はバブルの二の舞回避 確かに最近の数字によって景気浮揚を感じはしますが、マクロな動きと各企業の感覚には大いに異なるものがあるのも確かです。景気の先行きも含めた経営及び求人、人事の実際としては、
  • しばらくは景気の様子を見ておき、消費税増税後もこの景況感が維持できると判断出来たら、投資、コスト増(本格的な拡大再生産)への取り組みを開始する。
  • 人員数、人員構成、人件費に関することは、しばらくは慎重に進める。コスト構造の中でも上位、かつ大きなウェートを占めるのが人件費、支払いは待ったなしであり、減価償却が効くわけでもないため慎重にならざるを得ない。また景気の波で年齢層別の人員構成に再びバラツキが出ることは避けたく、むしろ、過去の人員構成のバラツキを解消する方が今の優先課題と言える。
といったところがあるでしょう。 では、今後しばらくどうするか? 当方は経営コンサルティングをするため経営側、人事側(求人側)の「今後、しばらく」の採用戦略について考えてみることにします。当面の策としては、人事の特性上、人員数、人員構成、人件費に大きな変化を無理に先読みして作ると、仮に景気が付いて来なかった時のインパクトが大きく、その修正に時間とコストを要してしまったことはバブル崩壊で経験した通りです。 よって、景気浮揚策が市場にも浸透し、時期としては2014年4月の消費税8%増でも影響を受けないか、今後を想定、判断をして、新卒採用増とすべきか否かを判断すべきと考えます。つまり新卒採用増を考える場合は、景気の問題なしと確実に判断できる2015年入社「以降」からとするのが相応しいのではないでしょうか。但し、「大企業」と「中小企業、ベンチャー企業」では、その捉え方が異なり、
  • 景況感が出ればすぐに採用者が集まる大企業の場合は、2015年までは慎重に採用枠を設ける(景気の良さを感じれば、一気に学生の人気が戻るのが大企業であることは、今年の新卒の求職希望の状況から明らか。よって近々に無理をする必要はない)。
  • そもそも大量採用を前提としない中小企業、ベンチャー企業は、採用を増枠し、優秀人材(その定義はさまざまですが)の確保を進め、景気回復後の確保難に備える(増枠の幅は、財務上調整の効く範囲、また失礼ですが、過去の離職の動向からその分を差し引いても、やや増員となる枠あたりをねらうのが良さそう)。
といった違いで直近の方策を考えることが必要です。 現在のところ、アベノミクスは、「安倍“のみ”行くっす」の先行状態で、「就活生“も”行くっす」になり切れていないことを考えれば、就活生は景況感を過信せず、当面、就活生はここ数年と同様の就活スタイル(応募先とその着地先)が続くことを想定し、その想定に基づく取り組みが必要となるでしょう。       ヒューマンマネージコンサルティング株式会社 人材総合コンサルタント 研修トレーナー 眞下 仁(ましも ひとし)